マークオーディオのスピーカーを使ってバスレフ型のエンクロージャーを作ってみました。
使用したユニットは(ONTOMO MOOK)の付録として手に入るものです
ユニット単体では市販されていませんが、型番はOM-MF5です。
付録と言っても侮ってはいけません。なんせ、この本、付録のスピーカーがメインで本は24ページの冊子が入っているだけで、明らかにスピーカーがメイン。
巷では倍のクラスと渡り合えるほどの性能と言われています・・・
(私はニワカなのでよくわかりませんが・・・)
↓本はぺらぺら。ビッグワンガムの本バージョン!
MarkAudio OM-MF5
ユニットはメタルコーンでネジ穴は5つ
作ってしまえば見えない裏側。
この画像から分かると思いますが、取り付けビスは逆星型になるんですよね。
スピーカー設計
スピーカーの諸元は冊子に書いてあります。
スペックの意味も簡単ではありますが解説されているので初心者にはうれしいです。
不足している部分はネットで調べました。
その結果、このスピーカーはバスレフや密閉型に適しているユニットだと分かりました。
逆にバックロード向きではないので、避けたほうが無難。
バックロードについてはこちら↓
【ダイソーの300円スピーカーをバックロードホーンとして蘇らせてみた】
バスレフとは
そもそもバスレフと何でしょうか?
まずはバスレフについて少し説明します。
スピーカーは裸のままアンプにつなぐだけで音が出ますがこれでは低音になるほど音が聞こえません。
これはスピーカーの振動板は前後に動くことで前と後ろで逆位相の音波が生成され、これがスピーカーの前後に回り込むことで互いに打ち消し合い、音が出ないためです。
「図1 スピーカー音波」参照
(高い音は指向性が強いので、そのまま耳に届きますが、低音ほど打ち消し合う力が強いので聞こえない)
そこで、図2のようにスピーカーの後ろ側をボックスで覆い、後ろから出る音波を遮蔽します。
更に、箱にダクトを設けることでヘルムホルツ共振を発生させ、低音を増強する効果を持たせたものがバスレフ型の特徴です。
ヘルムホルツ共振とは瓶の口に息を吹く掛けるとボーっという音が出る原理のことです。
このヘルムホルツ共鳴は計算によって求めることができ、ポートの内径・長さ・エンクロージャーの容量の3パラメータを変化させることで任意の音質に変化させることができます。
エンクロージャーの計算
計算は手計算でもできますが、下記の様なシミュレーションサイトを利用すると便利です。
http://www.asahi-net.or.jp/~ab6s-med/NORTH/SP/bassreff_canvas.htm
シミュレーションサイトを開くと、スピーカーやボックスのパラメータを入力する欄があるのでそれぞれの項目を入力します。
最低共振周波数・・・スピーカーの説明書に記載されています。
実効振動板半径・・・説明書に記載
振動系等価質量・・・説明書に記載
等価 ・・・説明書に記載
エンクロージャ容積・・・スピーカーボックスのサイズに合わせて任意に設定します。
色々変化させて最適な容量を見つけることもできます。
ポート共振周波数・・・バスレフポートの共鳴周波数です。低く設定するほど低音で共鳴するバスレフになりますが、周波数特性に妙なピークができてしまい返って音質が悪くなります。
出来るだけ滑らかな波形になるように調整しましょう。
吸音材の量・・・正直、これはどの程度のモノなのかわかりません。ただ、吸音材を入れないと音が乱反射して歪むので”少なめ”~”普通”を選ぶといいとおもいます。
シミュレーションした結果
見難いですが緑の線が密閉型スピーカーから出る音。
青がパスレフポートの音の波形です。
そして、白がそれらを合算した波形になります。
設計
パスレフ計算を元にエンクロージャーを設計します。
基本設計はスピーカー付属の冊子に記載(P16)に記載されているエンクロージャーの見本を参考にバスレフダクトを丸型に変更してみました。
前面パネルがおおよそ9度傾いているのが特徴です。
PCなど卓上スピーカー向きですね。
↓わざわざ3DCADを使うこともないのですが、イメージが掴みやすいので便利です。
簡単な設計図はこちらからダウンロードできます。
スピーカーの製作
材料はワイン樽にも使われている堅牢なオーク(楢)を使いました。
材質も自由に選べるのがDIYの良いところです。
↓基本的に無垢板で発注しましたがこのように幅広のものは幅はぎ材になってしまいます。(残念)
材料はマルトクショップで購入。材料費は全部で16000円ほどでした。
材料切断
材料を設計図の寸法に切断します。
自作の丸ノコ冶具を使って精密切断していきます。
https://jisaku-koubou.com/archives/5933
今回、エンクロージャーは材料の角を45°にカットし、留めはぎ継ぎで接合する予定。
かなり正確に45°カットしないと隙間ができ、逆に見た目が悪くなります。そこでルーターの45°ビットを利用し、精度を確保することにしました。
↓通称キノコ(嘘です)
45°にカットした筐体を仮組してみました。
接合部がピッタリと一致し、正確な直角に組みあがります。
スピーカーユニットの溝加工
スピーカーユニットを取り付ける穴、ビス穴、ダクト穴はCADで設計したものをプリントアウトして型紙にしました。
ドリルスタンドで垂直に下穴を開けます。
https://jisaku-koubou.com/archives/3582
下穴を開けたら自作のサークルカット冶具を使ってスピーカーを挿入する穴を開けます。
サークルカット冶具の作り方はyoutubeで公開しています。
↓
https://youtu.be/Sf6lqFn_vCw
下穴に冶具のピンを差し込み、くるりと回すだけで正確な円加工ができます。
この時、加工する木材は両面テープで固定すると安全に作業できます。
スピーカーをはめ込む座繰り(2.5mm)を掘り、ユニットを取り付ける丸穴を開けました。
↓この様に加工できます。
バスレフダクトは30mmの丸穴を開けます。
冶具では加工し難いのでホールソーを使って穴を開けました。
スピーカーの前面も角を45°にカットします。
要領は留めはぎ継ぎの時と同じです。
バスレフダクト
バスレフダクトは塩ビパイプを利用している作例を目にするのですが、せっかくの木製エンクロージャーに塩ビパイプは味気ない。
という事で木管を利用することにしました。
ただ、この木管の内径は内径がφ25mmなので少し手を加える必要があります。
まずは丸鋸で21mmに切断します。
板の厚みが18mmなのでダクト長は39mmになります。
ダクト長の設計は32mmなのですが、これは開口部をR9加工する為、微妙に長くしています。
この段差はベアリング付きルータービットを使ってトリミングすればピッタリ一致します。
ルーターテーブルを利用すれば安全で、しかも簡単に加工できます。
接着
各素材の加工が終わったので接着します。
一番難しいのが、留めはぎ継ぎの接着。
接着剤に流動性があるうちに直角を出し、尚且つ浮きが無いように密着させる必要があります。その間わずか10分。
10分もあれば十分だと思われがちですが、作業してみると意外とギリギリの時間だという事が分かります・・・
↓素早いクランプにお勧めなのがベルトクランプを用いる方法です。
ベルトを締めあげるだけで密着するので素早い作業ができます。
四隅に三角の角材を接着して補強します。
角材は自作してもいいですが私はホームセンターで15mm角のモノを購入しました。
前面パネルを接着する前に、紙やすりで面を整えます。
平らな台に紙やすりを貼り付け、段差がなくなるまでゴシゴシとヤスリで削っていきます。
無垢の木なので材料が反っています。
浮きが無いように出来るだけ多くのクランプでしっかり固定することがポイント。
前面パネルの裏側に補強材を接着します。
補強材は端材など、適当なものを利用しましょう。
↓写真では少し見難いですが、スピーカーとバスレフダクトの中間の位置に補強材を入れています。
仕上げ
全体にやすりをかけ、はみ出した接着剤や接合の段差を整えます。
仕上げはワトコオイルを使います。色はナチュラルを使っています。
今回使用したオークにはワトコオイルがベストマッチしました。
良い艶と色合い、そして木目が非常にきれいに浮き上がりました。
↓
↓
スピーカーユニットの配線
スピーカーの背面にターミナルを取り付けます。
使用したターミナルはこちら↓
値段も手ごろだし、無難な製品なので品質も良いです。
予め加工しておいた穴にターミナルを挿入。
スピーカーの取り付け口から手を入れ、内側からネジ止めします。
スピーカーとターミナルを接続するスピーカーケーブルに平端子を圧着します。
平端子は平型端子(メスセット) 250型が適合サイズです。若干緩いのでペンチで口を潰すと良いです。こだわる人はオーディオ用の金メッキ端子を使うのでしょうが、これで十分。
スピーカーケーブルはアマゾンブランドで売られているものがリーズナブルで品質も高いです。太さも16ゲージならオーディオ用としては十分でしょう。
オーディオケーブルの被覆を剥がし、銅線を捩じってこよりを作ります。
平端子を挿入し、圧着工具で締め付けて接合します。
↓
ターミナルとスピーカーをケーブルで接続します。
そうそう、この時点で吸音材を入れることをお忘れなく。
吸音材はカー用品がリーズナブルで便利です。
吸音材を入れすぎるとバスレフの効きが悪くなりますし、ボックスの個性が無くなるので私は好きではありません。なのでスピーカーの背面と底に敷いただけ。
量を増やしてみると音に元気がなくなったので即中止。
スピーカーケーブルを接続する際は、スピーカーの+と-をよく確認しましょう。
逆に接続すると右と左のスピーカーの位相がズレ、音質が悪くなります。(まぁ、両方とも逆に接続すれば問題ないのですが・・・・)
完成
気になる音質は標準的なバスレフらしく大きさの割に良く低音が出ています。
吸音材を少なめにしたことで、中低音が元気になっている印象。高音はマークオーディオらしい品のある音質。
以前作ったダイソースピーカーで作ったバックロードと比較してみるとやっぱりマークオーディオの方が良い音でした。
低域、中域、高域と全ての帯域でマークオーディオの音質が勝っています。
まー、ユニットの口径も価格帯も全然違いますし、当然と言えば当然。むしろ、ダイソースピーカーはよく頑張りました。
↓音質の比較はyoutubeのメイキング映像後半で視聴ください。
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