前回、卓上スタンドを改造してLED照明を作ったのですが、物が大きすぎて気軽に運べません。加えて、9WクラスのLEDでは光量が不足気味。
そこで、できるだけ出力の大きい撮影用ライトを作ってみることにしました。
3000K~5000K、約10W~150W調光可能な高演色LEDテープを使った照明ライト。理論値は 約1000 lm/mのLEDテープを10m使用しているので、約10000lmの大出力撮影ライトになりました。
部品表
- 5000K 高演色LEDテープ 5m
- 3000K 高演色LEDテープ 5m
- LEDドライバ ×2
- 0-10Ω 半固定ボリューム ×2
- 20A対応カバースイッチ(白) ×1
- 20A対応カバースイッチ(黄) ×1
- 静音ファン ×2
- カーボン抵抗 10kΩ ×2
- 抵抗 4.7kΩ ×2
- 銅線 Φ1.6~2.0mm 1.5m
- 被覆導線 AWG24
(5Aまでの配線用) - 被覆導線 AWG18
(12Aまでの配線用) - MDF 9mm×300×900mm ×1
- MDF 5.5×300×900mm ×1
- MDF 2.5×600×900mm ×1
- 三脚用のナット ×1
(家具のアジャスターを利用) - スイッチング電源ユニット 24V 150W ×1
高演色LEDとは?
演色性とはどれだけ自然光に近いかを表した指数。
自然光を100としたときの数字をRaで表しています。
低価格LEDは演色性が非常に悪くRa70ほど。一方、高演色LEDはRa90以上。中には97以上のLEDも存在するようです。
今回使用したRa90+のLEDと低演色LEDで撮影したものを比較してみました。
(WBはテーブルの白(左端の部分)を基準に設定しているので同等です。)
演色性の違いは肌色や黄土色で特に差が出ます。
まず、金色の塗装がされた時計を撮影してみました。明らかに表現力に違いがでています。
↓低価格LEDで撮影
特に金色の濃淡が少ない印象。色の表現力が低く、立体感がありません。
全体的にボヤッとした写真です。
↓自作した高演色LEDで撮影したもの
こちらは金色の濃淡がはっきりしています。色の表現力が向上して立体感も出ていますね。
一方、単調な色合いだとあまり品質に差がないことも。
黒いレンズを撮影してみました。こちらは比較しても大きな違いはありません。
↓低演色LED
↓高演色LED
LEDテープとは?
LEDテープとはその名の通り、薄いテープ状の基盤に無数のLEDが取り付けられた照明器具。
裏面が両面テープになっているので、点灯したい場所に張り付けることが可能。12VのACアダプターを接続するだけで御覧の通り点灯します。
こちらは3000KのLEDなのでオレンジ色。今回は5000KのLEDも使って色温度を調整できるようにしました。
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超高演色5050テープLED(AAランク)昼白色 5000K
動作電圧:DC12V
消費電力:14.4W/m
LED数:60LED/m
演色性:Ra90+
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超高演色5050テープLED バリエーション
テープLEDの効率
テープLEDは並列回路になっているので12VのACアダプターに接続するだけで点灯します。
ただし、回路を一筆書き(図01)のようにつなぐと効率が悪くなります。
なぜかというと、テープのプリント配線は線の断面積が小さく、長くなるほど配線の抵抗が大きくなってしまうから。同じLEDテープでも、1mと5mのLEDテープを比較すると、LED一つ当たりの光量は1mの方が明るいわけです。
そこで、図01のように繋げるのではなく、図02のように太い導線に一本一本LEDテープを繋げることで効率低下を防ぐことができます。
というわけで、今回のLEDライトは図02の配線を基本にして製作することにしました。
LED調光回路
LEDの調光(明るくしたり、暗くすること)はPWM方式が簡単。
PWM方式とは短い時間にON・OFFを繰り返し、ON時間を長くしたり短くすることで、”見かけ上”LEDを明るくしたり暗くする方式です。
簡単な回路で効率も良いのですが、ビデオ撮影の時画面がちらつく(フリッカー現象)とうものが起きてしまうことがあります。
ビデオ撮影用のライトを作るわけですから、フリッカーは好ましくありません。
そこでフリッカーが発生しない電流制御による調光機能を搭載することにします。
電流制御のLEDドライバ
LEDは一定の電圧以上になると急激に電流が流れるようになるという特性があります。
つまり、LEDにはオームの法則が成り立たず、加えて電圧の僅かな違いで電流の流れる量が大きく変化しますから電圧制御は不向き。
そこで電圧を一定にして、電流を制御するLEDドライバを作る必要があります。
自作してもよいのですが、1000円+αで手ごろなドライバが手に入るのでこちらを利用することにしました。
LEDドライバの使い方
このLEDドライバは電流・電圧をそれぞれ可変することができます。
(電圧は降圧制御なので印加する電圧以下に可変できます。)
制御電圧は0.8V~28V、電流はMax12Aと性能も申し分ありません。
使い方は下の図を見ればおおよそわかると思います。
電圧電流調整は時計回りで大きくなり、反時計回りで小さくなります。
調整は半固定の可変抵抗で調整するのですが、多回転型の固定ボリュームなので何回転も回さないとなりません。そこで、オーディオなどでよく利用する小型ボリューム抵抗を用意し、電流調整側を少し改造しました。
最初、多回転ボリュームは電圧制御する為のものと思い、可変抵抗を直列にしたのですがうまくいきません。どうやら電流を制御するようです。
ということで抵抗を並列接続し電流を分岐してみましたが、今回使用したLEDテープに合わせて14.7kΩを追加しています。この抵抗が無いとMax電流が低下します。抵抗を大きくするほど最大値が100%に近づきます。
回路図通りに改造したLEDドライバ。
3000Kと5000Kそれぞれ調光するのでLEDドライバは2台必要。
MDFでライトのフレームを作る
フレームは加工が簡単なMDFで作ることにしました。
MDFとは中密度繊維板といって、木くずを繊維レベルに分解して固めた板のコト。
性質としては紙に近いかも。
木目がなく、そりが少ないことからとても扱いやすいボードです。ホームセンターに行けば安価に購入することができます。
図面を簡単に作図。
加工はプロクソンのテーブルソーやルーターでMDFを切断。
MDFのパーツ加工が終わりました。
LEDテープは裏面が両面テープになっているので取り付けは簡単。
パネル裏側には文字通り銅線を入れます。
(左右のスペースに+、-の2本づつ)
フレームには結束バンドを通す穴が開いているので締め付けて固定します。
被覆されていない導線なのでショートしないようにしっかり締め付けます。
パネルには導線を通す穴を開けています。
表からLEDテープにはんだ付けし、導線をパネルの裏側に通します。
穴に通した導線を銅線にはんだ付けします。プラスとマイナスを間違えないように注意!間違えると通電した時LEDが破損します。
これで一応LEDの配線は完了。12Vの電圧を加えると点灯するはずです。ただし、片方5A以上の電流が流れるので、5000Kと3000K両方点灯させるには120W以上の電力が必要です。
ACアダプターでは限界があるかも。
そこでユニット電源を使っています。
動作テスト
電源は12Vでも動くけど、基板上のロス・内部抵抗や負荷が原因なのか、定格の6割程度の出力しか出ません。24V電源を使い、LEDドライバで12Vに降圧して使うとほぼLEDの定格通りの電流が流れました。(それでも定格に満たなかったので13Vに設定しました。)
手持ちのテスターは10Aまで測定ができるので電流も測定して調整します。
調整といってもLEDテープは12Vで丁度良い電流が流れるように抵抗がついてるのでボリュームを回しても電流が増えない位置に設定します。
設定が終わったらLEDドライバ、スイッチ、調整ボリュームを取り付けます。
ドライバを接続するときは黄色枠で囲った4端子が外側になるようにし、中央の放熱板は写真のように交互に重ねて取り付けました。
これは4端子部品の発熱が大きいため。
ドライバの冷却フィンの部分にはスリットを設け、外気で効率よく冷却できる仕組みにしています。PC用の静音ファンを使っているので音は聞こえますがほとんどマイクに乗らないレベル。
スイッチはLEDの色温度に揃えたのでひと目でわかります。
すぐ下のボリュームがパワーコントローラーです。
使ってみた感想
さすがに10000lmの大出力撮影ライトなので光量は申し分ありません。
加えて演色性も良好。色温度も調整できるのでナチュラルな色合いが出せます。
ただ、面発光といえど一方方向から照射されるので光は固いです。やはり自然光には及びません。
バウンスすれば影は柔らかくなりますが光量が落ちるので影が強く出てしまいます。
トレーシングペーパーを使ってディフューザーにすると光が柔らかくなっていい感じ。想像より光量低下しないので実用性も十分です。
発熱問題
100%出力ではLEDの定格限界になるので発熱します。
本当は放熱性を考え、MDFではなくアルミを使おうかとも思いましたが漏電が怖くて却下しました。
LEDの発熱は寿命に影響するので普段は7割~8割ほどで運用するのが良さそう。
ちなみにコントローラーはファンの冷却が効いているので問題ありませんでした。
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