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鑿(ノミ)を仕立てる

手仕事

ホームセンターでノミを買ってきたので仕立ててみました。

買ってきたばかりのノミは一見してきれいに刃が整形されているので切れそうに見えます。
実際に切れないことはありませんが、本来は物が持つ切れ味にはなっていない状態です。
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ノミを正面から見てみましょう。
刃が斜めになっていますよね。ノミは刃先が直角に研げていないと道具としての用を足しません。
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柄の部分も、ご覧の通り桂がしっかり入っていませんね。
このまま金槌で叩くと金輪(桂)が外れてしまい、柄が割れてしまいます。
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ということで、早速道具として利用できるように仕立てていきましょう。

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桂下げ

まずはノミの柄と金輪を整形するため、いったん取り外します。
ちなみに、この作業のことを桂下げと呼ぶらしいです。

↓写真のようにモンキーレンチを適当な台に固定し、金輪を挟み込みます。
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金輪の内径よりも小さく切った木材片を乗せ、金槌で叩きます。
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ノミが落ちないように手でしっかりと支えて作業しましょう。

金輪が抜けました。
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金輪の内側をテーパー状に加工します。
テーパーにすることで、ノミの柄にしっかり入り込むようになります。
加工には金やすりセットがお勧めです。

このように内側の径をテーパー状に広げます。

ノミの柄を叩いて木殺しします。
これも金輪を入れやすくする為の作業です。
写真では下に鉄製の板を置き、金槌で叩いています。
均等に木を圧縮させるように、柄を回しながら叩いて潰していきます。
あまり力任せに叩くと絵が割れてしまいますので、金輪の入り具合を見ながら少しづつ叩いてください。

ノミの柄はニスでコーティングされている製品があります。
この後で、柄に水を含ませる作業があるため、ニスを除去する必要があります。
柄のお尻の部分を紙やすりで研磨し、ニスを剥がします。
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金輪を柄に組み込みます。

木の端材に鑿を立て、金輪を打ち込んで挿入します。
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この様に木の部分は叩かず、金輪だけを叩いて挿入します。
おおよそ1~2mmほど金輪が入ればOKです。
入りきらない場合はもう一度金輪のやすり掛け、木殺しをやり直します。

柄の部分を水につけ、木殺しを戻します。
10分も水につけておけば良いでしょう。

水から出したら柄の頭(木の部分)が外側に広げる様に叩きます。

最後に、こんな感じでドーム状に整形して仕上げます。

面取り

ノミの横で手を切らないように僅かに面取りして丸めます。
面取りはノミの手元側だけ行います。刃先まで面取りしないように、おおよそノミの半分の範囲を面取りしてください。

裏押し

いよいよノミを研ぎます。
私が使用した砥石は茶色の砥石が、#800番の焼結式ダイヤモンド砥石、青い砥石が#3000番の焼結式ダイヤモンド砥石、クリーム色の砥石が剛研 富士 #8000です。
その他、画面左下に映っている者はイボタポリッシングパウダー#6000です。

ちなみに、砥石の裏側には1000番の耐水ペーパー(黒い面)を貼り付けています。
これはダイヤモンド砥石の面直しに使うものです。

まずは#800のダイヤモンド砥石で裏押しと呼ばれる作業をします。
自分から見て右側に1cmほどの幅にイボタを擦り付けます。
イボタはロウのような物で、砥石に塗り付けるとその部分が目詰まりして研磨できなくなります。
これはノミの裏押しにおいて、刃元が柄の重みで片摩耗してしまうことを避ける目的があります。
ちなみに、イボタは耐水ペーパーで面直しすれば簡単に落ちます。
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霧吹きで水を吹きかけます。
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ノミの裏を平面に研ぎます。
前述のように柄の重みでノミの刃元が強く押されがちです。
下の写真のように右手の小指をノミの柄に引っ掛け、軽く持ち上げるような気持ちで支えましょう。
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そして、左手でしっかりと刃先の部分を押さえて研ぎます。

このように細いU字状に研げればOK。
U字状の面が真平になるまで続けます。一部でも研げていない部分があっては駄目です。
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同様の手順で#3000、#6000と番手を上げて研いでいきます。
#3000からはポリッシングパウダー#6000を写真のように少量出し、水で丁寧に溶いてから研磨しましょう。
砥石の目詰まりが無くなり、格段に研磨が楽になります。

あとは通常通りに研ぎます。
#6000番はほとんど研磨されませんのでイボタは不要です
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裏押しが終わりました。
映り込みを見て、平面になっているか確認します。もし湾曲している場合、砥石がへこんでいる可能性があります。砥石を平面に研磨し、もう一度#800からやり直してください。
ちなみに、ノミの場合は裏を基準にして削る為、べた裏になっていた方が都合がよいと言われています。逆にカンナの場合は糸裏と言って、細い裏にするそうです。

鎬面の研ぎ

鎬面とはノミの斜めになっている面の事。
ここも真っすぐに研いでいきます。
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まず、砥石の面を直し、同時にイボタも取り除きます。
面を直したら、砥石の表面に耐水ペーパーの研磨粒が残らないようにきれいに洗い流します。
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鎬面も裏押し同様に小指で柄の部分を軽く持ち上げる気持ちで研ぎます。
そのまま研いでも平面に研げますが、だんだん刃が鋭角になってしまい、刃が欠けやすい鑿になってしまいます。
おおよそ30~32°位の傾きになるように研磨しましょう。
難しい場合や角度を補正したい場合は、研ぎ治具を自作していますので参考にしてください。
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ちなみに、この写真は横研ぎです。
横研ぎは刃先に横筋ができる為、刃が欠けやすいと言われています。
要するに砥石の研磨によって筋ができ、その部分から折れやすいというわけです。
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ですが、私は横研ぎで問題ないと思っています。
というのも、最初から最後まで縦に研ぐ必要はなく、最終仕上げで縦研ぎにすれば前述の横研ぎ問題を解決できるからです。
実際、初心者の場合は横研ぎの方が研ぎやすく、正確な角度で平面に研ぎやすいという利点があります。
仕上げ砥石で縦研ぎにすれば面の狂いも最小限に抑えられ、しかも長切れする縦筋を付けることができるのでこの研ぎ方をお勧めします。

古いやり方もちゃんと取り入れ、「どうして横研ぎは良くないのか」、「どうして縦研ぎを推奨しているのか」その理由をよく考え、原理を理解することがとても大切だと思います。

↓最後、#6000の砥石で縦研ぎし、最終仕上げをしています。
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最後に裏面にできた返りを取ります。

綺麗に平面に研げました。箱のフチが綺麗に映りこんでいます。

切れ味の確認は、新聞紙に刃を直角に当て、そのまま押すだけで切れれば合格。
斜めに引いて切ったりしては駄目。きちんと研ぎができれば、押し込むだけで切れます。
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最後に防さびの為の刃物油を塗布すれば完成です。
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コメント

  1. blank Kei OKU より:

    いつもながらハイレベルの記事に感嘆させられています。